ユニバーサルデザイン入門|わかりやすい印刷物のつくり方
ユニバーサルデザインとは?
ユニバーサルデザイン(UD)とは「universal=普遍的な」の言葉が示す通り、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いに関わらず、できるだけ多くの人が利用できることを目指した設計(デザイン)のことです。
建築物やその設備、製品や情報などさまざまな分野で取り組まれています。
ユニバールデザインの提唱者
アメリカのノースカロライナ州立大学ユニバーサルデザインセンターのロナルド・メイス氏によって、1985年に提唱されました。
バリアフリーとは違うの?
ユニバーサルデザインがあらゆる利用者を対象にしているのに対し、バリアフリーは高齢者や身体障害者といった対象に限定した設計(デザイン)であることが、ユニバーサルデザインとバリアフリーの異なる点です。
ユニバーサルデザイン 「7つの原則」
- 1.公平性
誰でも公平に利用できる - 2.自由度
使いやすい方を選んで使える - 3.単純性
使い方が簡単で直感的にわかる - 4.分かりやすさ
欲しい情報がすぐに理解できる - 5.安全性
ミスや危険なことに繋がらないようになっている - 6.体への負担の少なさ
無理な姿勢や強い力が必要でなく、楽に使用できる - 7.スペースの確保
十分な大きさ・広さがある
ユニバーサルデザインの具体例
私たちが普段生活している身近な場所にユニバーサルデザインは活用されています。例えば、多目的トイレ、音声案内、絵文字(ピクトグラム)の標識、幅の広い改札も車椅子が通れるよう配慮されたユニバーサルデザインです。
家庭の中の例として、シャンプーとリンスのボトルは、違いがわかるようにシャンプーの上部容器に突起が付けられています。これは視覚に障害のある人にもわかるようにデザインされたものです。
カラーユニバーサルデザイン
先天的色覚異常、白内障などで、色の見え方が一般と異なる人にも、情報が伝わるように配慮されたユニバーサルデザイン。
ユニバーサルサウンドデザイン
難聴・健聴、年齢などの差異に関わらず、聞き取りやすい音環境設計(デザイン)を行うユニバーサルデザイン。
ユニバーサルデザイン印刷物の3つポイント
1.文字の大きさ・字体・余白
大きさ
文字の大きさはできるだけ12ポイント以上になるようにします。より見やすくするためには14ポイント以上が効果的です。
字体
ユニバーサルデザインの視点で作られたフォントを「UD(ユニバーサルデザイン)フォント」と言います。
遠くからでも文字の形がわかりやすく、誤読しにくいようにデザインがされています。
ゴシック体と明朝体では、文字を小さくせざるを得ない場合はゴシック体は線の太さが均一のため小さくても読みやすく、文章が長文の場合は明朝体が読みやすいです。
字間・行間・余白
適度な余白をとり、読みやすいように心がけます。同じ文字の大きさでも漢字を多用すると詰まって見えます。
限られたスペースに情報を詰め込もうとせずに、情報・文章を整理することが大切です。
2.表現方法
文章
正確に、わかりやすい文章で表現します。文章を作成する前に最低限伝えたい情報を明解にしておきましょう。
事実に基づき「正確」に表現しようとすると、難しい用語を使ったり文章が長くなりがちです。5W1Hを使い、文章は短く区切り、簡潔な言葉を使うようにします。
写真・イラスト・図形
写真やイラストのような、直感的に伝えることができる表現を効果的に使います。
図形や表を使用する際は、何を表しているかがはっきりわかるようにします。
その他
・箇条書きにする。
・読む順番がわかるように番号を付ける。
・強調したい情報に下線を引いたり、太文字にする。
3.色の使い方
色を効果的に使うことで、情報にメリハリができ読みやすくなります。
しかし、色覚に障害のある人の中には、黒字の本文の中で目立たせたい箇所に赤を使うと、赤の色味によっては黒と識別ができないことがあります。
色覚異常は個人差があります。色に頼りすぎず、太文字にする・下線を引くといった表現をするように心がけることが必要です。
色の使い方の確認方法として、白黒プリントがおすすめです。白黒でも伝えたい情報が強調され、正しく伝えられる表現ができているかチェックします。
色の選び方一例
・黒と暗い赤の区別がしいにくい人がいるため、赤はオレンジ寄りの赤を使う。
・赤と緑を同時使う場合は、青みの強い緑を使う。
・強調色はオレンジ・水色が他の色と区別しやすく見やすい。
・面積が小さいと区別しにくいので、区別させる色は大きく表示する。
・同じ明度・同じ彩度は避け、明度・色相・彩度がはっきり対比している組み合わせを使用する。
カラーユニバーサルデザインの色覚シミュレーションもありますので、そういったものを利用することで、より精度の高いユニバーサルデザインを作成できます。
印刷物における配慮する対象者
・視覚障害者
視覚に障害のある人には、まったく見えない、少し見える弱視の人の他にも、視覚の欠損により周囲の情報がわかりにくかったり、視力低下、ぼやける、視野狭窄など様々な障害があります。
・色覚障害者
色覚に障害のある人は、男性の20人に1人、女性の500人に1人、全国では300万人以上いると言われています。色の感じ取り方には個人差があります。
・聴覚障害者
先天的な聴覚障害がある場合、言語習得より前に発症しているため複雑な表現や難しい漢字を理解するのが難しいことがあります。
・知的障害者・精神障害者・発達障害者など
複雑な表現や難しい漢字などを理解するのが難しい場合があります。発達障害者の中には複数の情報を同時に把握するのが苦手な場合があります。
・高齢者
加齢とともに視力が変化していきます。色覚機能、コントラストに対する感度の低下、ぼやけるなど見えにくくなります。
・外国人
日本語を母国語としない人たちは、漢字や難しい表現などがわかりにくいことがあります。ひらがなを使う、ルビを振るなどします。