SDGs入門|持続可能な社会のために印刷物にできること

武田 知也

SDGsとは

SDGs(持続可能な開発目標/Sustainable Development Goals)とは、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを誓った、持続可能でよりよい世界を目指す国際目標のことです。
2015年に策定され、2030年までの長期目標として、17のゴール・169のターゲット(具体目標)から構成されています。

ニュースやメディアで取り上げられることも多くなり、耳にする機会も増えてきたのではないでしょうか?SDGs達成に向けて目標に取り組む企業・団体も多くなってきました。

あなたは17の目標のうち、いくつを知っていますか?
 
 

 
 
2021年現在、SDGsの目標達成期限である2030年まで10年を切りました。
あなたはこれらの目標すべてを2030年までに達成できると思いますか?

もしその答えが「いいえ」なら、なぜ達成できないと感じたのかを一度考えてみてはいかがでしょうか。

SDGsと企業

SDGsでは国はもちろんのこと、人材・技術・資金を持ち大きな影響力のある企業の貢献が期待されています。
これからの10年、それぞれができるSDGsへの取り組みを積み重なることが、サスティナブルな社会を実現するための鍵となります。
今回のコラムでは「印刷物」をテーマにSDGsへの取り組みをご紹介します。

環境負荷の少ない印刷技術

水なし印刷

水なし印刷とは、印刷時の廃液を排出しない技術です。
廃液には有害溶剤を含むこともあり、水なし印刷を採用することで環境保護活動に取り組むことができます。

水なし印刷=環境保護印刷
水なし印刷とは、昨今の地球規模での環境に対する活動やCSR(企業の社会的責任)などにおいて、印刷時に有害な廃液を排出しない「水なし平版方式」という技術を使い、印刷物を通じて地域社会の環境保全に貢献しています。 皆さまの印刷物にも、この「水なし印刷」を採用することで、皆さま自身が環境保全活動に大きく貢献していることになります。
「一般社団法人日本WPA」より引用
https://www.waterless.jp

植物油インキ

環境に配慮した植物油インキ(ベジタブルオイルインキ)です。
再生可能な大豆油、ヤシ油、パーム油、亜麻仁油等から生産された油や、廃食用油をリサイクルした再生油を使用して生産されています。

石油系のインキと比べ、焼却時に大気汚染の原因成分の発生を減らす、自然環境で分解されるといった環境負荷を軽減します。

環境負荷を考えた印刷用紙

再生紙

古紙から再生パルプを回収し、原料として製造した紙を再生紙と言います。

2019年の世界の紙の総生産量4.1億トン/年。
消費量は、国民一人当たり日本では202.7kg/年、世界平均54.6kg/年です。
日本の古紙リサイクル率は世界トップクラス76.9%、世界平均では58.7%です。

再生紙のデメリットとして、古紙のリサイクルを繰り返すと、強度や紙色など紙の品質が悪くなること、また古紙を使用しない製造に比べ、コスト、環境・技術面で負担が大きいというデータもあり、古紙100%にこだわるのではなく、用途に合わせた適切な古紙配合率が良いとされています。

白色度が低くても問題ない新聞紙、梱包材や緩衝材などに古紙を使うなどして、各製紙メーカーは古紙の配合率を高める努力をしています。

間伐材紙

間伐材とは、森林の成長過程で過密になる立木を間引いた木材のことです。森林は木々が過密になると、地表に日光が届かず成長に支障が出ます。そのため、健全な育成状態を維持するためには間伐が必要です。

間伐材は細くて未熟なことが多く使用用途が限られます。これらの間伐材を原材料にした紙のことを間伐材用紙と呼びます。

日本の林業
日本国内においては、過去に植えられた人工林の木材が、時代の変化とともに需要が低迷し、森林経営悪化による森林の放棄が増加しました。今後環境保全や安定した森林整備を行なっていくためにも、間伐材をはじめとした国内産木材の需要が高まることが望まれています。

海外では森林伐採による環境破壊が問題になっており、植樹なども行っていますが、日本においてはむしろ育ちすぎた人工林資源を伐採しなくてはいけません。
森林の放置は環境問題になっています。収穫期を迎えた人工林をこのまま放置すれば、台風や大雨による土砂崩れの危険性が高まります。山に眠る樹木をどう有効活用するかが重要です。

森を守る 森林認証用紙

森林認証制度とは、適切に管理された森林認証材を使用した用紙です。
代表的な森林認証「PEFC」「FSC」によって、適切な森林の管理・伐採を行い環境や地域社会に配慮されていると評価された、森林由来の製品へに発行する認証制度です。

再生紙と異なる点は、紙の原料である森林そのものを資源と捉えている点です。
認証紙は、森林の成長、管理、生態系への配慮を適切に管理し環境保全を行い「森のリサイクル」を行う林業者を支援し、世界の森林保全に貢献することへ繋がります。

「PEFC」と「FSC」はどちらも世界で最も広く普及している認証制度です。
取得条件はそれぞれ異なります。
 
FSC(Forest Stewardship Council®、森林管理協議会)
責任ある森林管理を世界に普及させることを目的とした国際的な非営利団体。持続可能な森林経営が正しく行われているかどうかを厳しい基準で審査する制度。
https://jp.fsc.org/jp-jp
 
 
PEFC(Pan European Forest Certification Schemes、汎欧州森林認証制度)
149カ国によって支持されている、森林認証を貿易上相互に認め合うための制度。世界統一規格は設けておらず、各国の審査基準を加盟国内で相互認証する仕組み。
https://sgec-pefcj.jp

脱プラスチック 代替品としての紙素材

マイクロプラスチックによる海洋汚染問題が深刻化し、世界中で脱プラスチックが叫ばれています。
紙ストローやプラスチック容器から紙容器へ、紙はプラスチックの代替品として見直されています。

今ままでプラスチック製だったノベルティグッズを、紙製やエコバッグなどの布製品に変えることもSDGsの取り組みの一つです。
また紙製品のノベルティグッズは、本体は紙製でも一部パーツにプラスチックを使用しているものは100%紙製品に切り替えるのが良いでしょう。

ノベルティグッズの制作実績を見る

ユニバーサルデザイン

SDGsは環境保全だけが目標ではありません。年齢や性別、人種・能力などの不平等をなくし「誰一人取り残さない(leave no one behind)」社会を目指すための指針です。

ユニバーサルデザイン
ユニバーサルデザイン(UD)とは「universal=普遍的な」の言葉が示す通り、文化・言語・国籍や年齢・性別・能力などの違いに関わらず、できるだけ多くの人が利用できることを目指した設計(デザイン)のことです。

ユニバーサルデザインの印刷物を作ることはSDGsの取り組みの一つです。

ユニバーサルデザイン入門|わかりやすい印刷物のつくり方

わたしたちにできることは

印刷物で取り組むことができるSDGsについてご紹介しました。

印刷ひとつをとっても、持続可能な社会に貢献するための方法はいつくもあります。
日々研究・開発されている、環境負荷の少ない優れた印刷技術や素材の知識を得ることは重要なことです。知識を積み重ねることが、行動するきっかけを与えてくれます。

わたしたち京都広告デザイン.comも印刷や広告を通して、持続可能なよりよい社会を作るためのお手伝いができれば嬉しく思います。